誰でもよからぬことをしてしまったとき
「地獄へ落ちるかも」
そう考えたことってありますよね。
行ったこともないのに思わず考えてしまう、地獄という場所。そこでは一体、どんな罰が待っているのでしょうか?
地獄へ行ったことがある人の話を元にではないのですが、地獄について最も詳しく考えられている仏教では、細かい設定や条件が具体的に示されているのです。
今回は、仏教の十六小地獄(じゅうろくしょうじごく)を元に、どのような罪に対してどのような罰が待っているのかを解説していきます。
1.地獄(じごく)とは
地獄とは、生前に悪行を行った人が罰を受ける世界で、そこにいる鬼たちに果てしない拷問をおこなわれる場所だと古代・中世の日本で広く受け入れられていました。
地獄とは地獄界と呼ばれ、仏教では一つの世界と考えられているのです。
死の後に、その人の生前の行いによって振り分けが6つあり、それは六道と呼ばれそのうちの最下層に位置づけられている場所が地獄とされています。
一番最下層が地獄と聞くととても恐ろしい場所ですよね、まずは死後の六道から説明していきましょう。
2.死後の6つの選択|六道とは
六道とは死者が死んだのちに行く場所のことをいいます。それぞれの道はその人によって内容が違います、
- 天道|天人が住む世界です。天人は人間よりも優ぐれた存在とされています。
- 人間道|人間が住む世界です。苦しみばかりでなく楽しみもあります。
- 修羅道|阿修羅が住む世界です。戦い、争いをくりかえしますがその原因は自分にある世界です。
- 畜生道|牛馬などの住む世界です。ほとんど本能ばかりで生きています。
- 餓鬼道|餓鬼とは腹のふくれた鬼です。食べ物を口にしようとすると火となり飢えと渇きに苦しみます。
- 地獄道|罪をつぐなう世界です。
この最下層になる地獄は大きな罪悪を犯した者が死後生まれる世界と考えられています。
参考:八大地獄
天道以外は必ず苦しみはつきまといます。人間道もとてもしんどいと感じてしまうのですが、それ以外は想像もしたくないほどですよね。
この六道の振り分けはすぐに決まるというわけではなくまずは裁判が行われるのです。
3.仏教が教える地獄のしおり
仏教で信じられている死後の出来事は、まず、死が訪れた後、人間は三途の川を渡ります。
川を渡っとしてもまだそこは地獄ではありません。7日間ごとに閻魔大王(エンマ様)を含む、亡者の審判を行う神様(十王)によって裁判を受けどの六道へ行くのかを決めます。
十王とは
鎌倉時代に日本で考え出された神様で、一般的には閻魔大王の知名度が高すぎるためほとんど知られてはいません。
出典:西光寺
十王は死者の罪の多寡により六道の行く先を決める役割を持っています。
- 秦広王(しんこうおう)不動明王 |初七日(7日目・6日後)
- 初江王(しょこうおう)釈迦如来 |二七日(14日目・13日後)
- 宋帝王(そうていおう)文殊菩薩 |三七日(21日目・20日後)
- 五官王(ごかんおう)普賢菩薩 |四七日(28日目・27日後)
- 閻魔王(えんまおう)地蔵菩薩 |五七日(35日目・34日後)
- 変成王(へんじょうおう)弥勒菩薩| 六七日(42日目・41日後)
- 泰山王(たいざんおう)薬師如来 |七七日(49日目・48日後)
- 平等王(びょうどうおう)観音菩薩 |百か日(100日目・99日後)
- 都市王(としおう)勢至菩薩 |一周忌(2年目・1年後)
- 五道転輪王 (どうてんりんおう)阿弥陀如来| 三回忌(3年目・2年後)
死者の審理は7回行われ、7回で決まらなくとも六道のどこかには振り分けが決まります。この決まらなかった者たちには8回目からの審理があり、事実上の救済処置として設けられているのです。
これらの裁判で地獄行きが決まった者たちにとって待ち受けている罰とはどんなものなのか解説していきましょう。
4.奈落の底へ到着、地獄で行われる8段階の罰
1段階目|等活地獄(とうかつじごく)|殺生をした者(虫も含む)
等活地獄は、殺生をしたものが落ちる地獄で、たとえ虫などでも殺したら悔いあらためなければならないとされていてとっても厳しい基準です。
等活地獄での刑期は500年、人間界の時間に換算すると約1兆6653億年です。
出典:絵葉書資料館
この地獄に来た者同士が鉄の爪や刀で殺し合いをしなければなりません。
からだを切り裂かれつづけ、粉砕されチリになってもその痛みは消えず死を何度も経験します。ですが鬼たちの「生きよ」との声により、死者として生き返り、またお互いに害をくわえることのくりかえし地獄です。
2段階目|黒縄地獄(こくじょうじごく)|殺生と盗みをした者
黒縄地獄は、生きている時に殺生と盗みをした者が落ちる地獄。等活地獄の一つ下の場所にありその苦しみは10倍も大きくなります。
刑期は1000年で、人間界の時間に換算すると約13兆年です。
出典:京都 北野天満宮蔵 北野縁起
この地獄では、死者は鬼によりとらえられて、焼けた鉄の地面に倒されて、熱く焼けた縄で体を打たれます。
その後に鉄の山を登らせてそこから、業火の中に突き落とされぐつぐつと煮られ続ける地獄です。
3段階目|衆合地獄(しゅうごうじごく)|殺生・盗み・邪淫
衆合地獄は、殺生・盗み・邪淫を繰り返した者が落ちる地獄。刑期は2000年、人間界の時間に換算すると106兆5800億年です。
出典:衆合地獄
死者は、両側から鉄の山に挟まれ圧殺されます。
剣の葉をもつ木の上から美人に招かれ、死者が木を登ると今度は木の下に美しい人があらわれ下へおり、美しい人に翻弄されるたびに剣の葉により体から血が吹きだし続けるのです。
4段階目|叫喚地獄(きょうかんじごく)|殺生・盗み・邪淫・飲酒
叫喚地獄は、殺生・盗み・邪淫・飲酒をした者が落ちる地獄です。
衆合地獄までの罪状にさらに、お酒にまつわる悪いことをするとこの地獄に落とされます。お酒に毒れての殺人・他人に酒を飲ませて悪事を働くようにしむけるなどが該当されます。
叫喚地獄の刑期は4000年とされており、人間界の時間に換算すると852兆6400億年です。
出典:plala
死者は熱湯の大釜と火の鉄室に閉じ込められます。そこはあまりの熱さに号泣、叫喚する地獄。許しを請う声を聴いた鬼はさらに怒り狂って、ますます死者を責め続けるのです。
しまいには赤い服を着た巨大な鬼が死者を追い回して弓矢で射りその体を獣に噛まれたりして叫びつづけても救いのない繰り返される地獄です。
5段階目|大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)|殺生・盗み・邪婬・飲酒・嘘
大叫喚地獄は、殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語(嘘)をしたものが落ちる地獄です。
刑期は8000年とされており、人間界の時間に換算すると6821兆1200億年です。
出典:叫喚地獄
叫喚地獄で使われる鍋や釜よりもさらに大きな物が使われて、更に大きな苦を受け叫び喚くという叫喚地獄を上回る苦しみがあります。
6段階目|焦熱地獄(しょうねつじごく)|殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見
焦熱地獄は、殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見をしたものが落ちる地獄です。大叫喚地獄までの罪状に加えて、仏教とは相いれない価値観(異教など)を実践したものが落ちる地獄とされています。
刑期は16000年とされており、人間界の時間に換算すると5京4568兆9600億年です。
出典:livedoor
この地獄は、赤く熱した鉄板の上で、常に極熱で焼かれ焦げさせられます。鉄串に刺されて、目・鼻・口・手足などに分解されて炎でそれぞれを焼かれるのです。
いままでの地獄の炎も雪のように冷たく感じられるほどに、焦熱地獄の炎の熱はとてもじゃありません。
7段階目|大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)|殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人
殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人をしたものが落ちる地獄です。大焦熱地獄の刑期は、この宇宙が終わる時間までの半分とされています。
出典:matthewmeyer
焦熱地獄までの罪状に加えて、犯持戒人(尼僧・童女にたいする乱暴)をした者が落ちる地獄とされており、焦熱地獄のさらに10倍の苦を受けます。
死者は焦熱地獄より極熱で焼かれて焦げます、その熱さはこの世が一瞬で焼かれるほどの強さです。
8段階目|無間地獄(むげんじごく)|殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人・父母・阿羅漢(聖者)の殺害
地獄での8段階目は最も辛い世界です。殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人・父母・阿羅漢(聖者)の殺害をしたものが落ちる地獄。
家族や僧侶を手にかけた者はとても罪が深いとされ、大叫喚地獄の1000倍の苦を受けます。
刑期は明確に示されていませんが、この宇宙が終わるまで無限にと考えてよいでしょう。
出典:石川県 照円寺
地獄の最下層に位置し、大きさは前の七つの地獄より広大で、この無間地獄に落ちるまで、まっ逆さまに落ち続けて到着するまで2000年かかるほど深いのです。
剣樹、刀山、業火の苦しみを絶え間なく受け64つの目を持つ巨大な鬼がいて、舌を抜かれ、100本の釘を体の隙間なく打たれます。
毒と火を吐く虫や大蛇にも厄介を出され、熱鉄の山を上り下りを終わりなくさせられます。これまでの地獄さえ、この無間地獄に比べれば夢のような場所だと感じる場所です。
地獄とはとても言いようもないほど想像したくない場所です。最後に地獄とは真逆の場所極楽浄土の存在も知っておきましょう。そうすることで、地獄の辛辣さから離れられます。
4.地獄と真逆の場所浄土とは
仏教での地獄の真逆の場所は浄土(じょうど)と表現されます。その場所は仏が住む場所で、浄國・浄界とも呼ばれます。
華池・宝樹などもあり建物も金と銀で作られているのです。
身も心も苦しみから一番遠ざかり、幸福の素材だけがあり常に幸せに満ち満ちている世界です。
5.まとめ
今回は仏教が考える地獄について解説してきました。地獄の世界は宗教によって表現が変わります。地獄というものがない思想もあるので次回また特集します。