十字架やシルバーコイン・神社のお守りなど、人間の歴史の中で装飾品は、身を守る目的で魔力があるとされ常に身につけてきた。
青銅技術が発達する前は動物の牙・歯・角なんかを加工し着飾ることをしていたほどその歴史は長い。
その中でもインディアンジュエリーは東南アジアで人気が根強く、その彫金・鍛造・ハンドメイド製法は大航海時代以降世界へ広められました。今回は精霊の存在を信じていたネイティブアメリカンが作るインディアンジュエリーを解説。
インディアンジュエリーを知ることは、ネイティブ・アメリカンの深い思いと世界観思考を知ることができます。
1.ネイティブ・アメリカンの軌跡
アメリカ大陸にもともと住んでいた人たちをネイティブアメリカンと現在は名称付けられています。彼らは黒い毛髪で、浅黒く日に焼けた肌をし身長もそこまで長身ではありません。
現在の日本人が想像するいわゆるアメリカ人とは全然違う容姿だとおもいます。アメリカ人のイメージは白人であり瞳の色がブルーだとお思いでしょうが、歴史上はヨーロッパから渡ってきたのがその人たちであり生粋のアメリカ人って解釈は少し違っており、アメリカに住んでいる白人の方々は元はヨーロッパ人です。
このようにネイティブアメリカンが現在のアメリカ人の容姿と違う理由は、航海者のクリストファーコロンブスの勘違いが発端です。
コロンブスがアメリカ大陸をインドだと勘違いした
15世紀にコロンブスがアメリカ大陸に渡った際に、そこをインドだと思い込んでいたために、彼らによって原住民のことが「インディアン(インド人)」と呼ばれるようになったのが始まりです。
コロンブスは商人でしたが扱うものは幅広く職業欄に『奴隷商人』ともされています。この時ヨーロッパの人たちは黒人の奴隷をもとめ航海をしていて、アメリカ大陸に到着したのです。
現在インディアンという名称は差別用語なので使用するのにはくれぐれもご注意を。ネイティブアメリカンと敬意を込めて称しましょう。
2.ジュエリー作りを得意としていた4つの部族
ネイティブアメリカンの部族の中で特にジュエリー作りを得意とするのが、アメリカ・サウスウエスト(南西部)で生活するホピ、ズニ、ナバホ、サントドミンゴの4部族です。彼らの作る工芸品はアメリカのみならず、世界中で高く評価され、愛されています。
今回は、そんなインディアンジュエリーに込められた思いと、そこからつながっていく精神世界を見ていきましょう。
3.神聖な意味を持つ代表的なデザイン|自然モチーフ編
歴史と伝統を誇るインディアンジュエリーのもつ、文化的で奥深いモチーフをいくつかご紹介します。
太陽(サン)
インディアンの間では、太陽は人間界すべてのものを作った創造主であり絶対神とされています。空に照り輝く太陽は、遠い宇宙に住む神様が人間の暮らしを見守るための窓と信じられてきました。
月(ムーン)
月は、すべてのものの守護者とされています。特に、夜の闇を守る大切な存在です。平静や、落ち着きを象徴します。いつも遠くから人間たちを見守って、幸せへと導いてくれる存在です。
三日月(ナジャ)
「ナジャ」は三日月のモチーフです。女性の子宮に形が似ていることから、子宝のお守り、女性のお守りとされてきました。また、母なる大地と繋がるという重要な意味も持ちます。
水(ウォーター)
すべての人間、動植物に必要なものです。カラカラに渇いた地を潤して、命を与えてくれることから、大地を潤し生命を宿すという意味のモチーフとされました。平和や生命の象徴でもあります。
特にホピ族は大切にしてきました。
雲/雨雲(クラウド)
雨を降らせてくれる存在です。人間はもちろん、すべてのものに必要な水をもたらしてくれることから、恵みや吉兆を表します。
雨(レイン)
雨は人間をはじめ、地上のすべてに必要な水をもたらしてくれる大きな恵みです。このことから、豊作や、豊かさを象徴するモチーフとなりました。
稲妻(サンダー)
嵐とともに訪れる雷は、災害というより、むしろ雨をもたらしてくれるありがたい存在です。雷が落ちる恐ろしさよりも、雨がもたらされるという幸いが上回ります。俊敏さ、迅速さを表すモチーフです。
山(マウンテン)
大きくそびえる山は、有り余る富を表しています。
山脈(マウンテンス)
広大な大地に連なる山々。そのモチーフは、水をはじめとする大自然の恵みが示されています。
4.神聖な意味を持つ代表的なデザイン|動物モチーフ編
ココペリ(実りの精霊)
ココペリ」は、人々に安住の地を与え、大地に実りをもたらすという精霊です。トウモロコシの粉を背負い、笛を吹きます。その笛を吹くことによって、豊作、子宝、幸運などがもたらされるといわれています。インディアンの文化において最も有名になった精霊です。
人(メン)
文字通り人生そのものが表現されています。
熊(ベア)または(ベアパウ)
インディアンたちの間では、熊は人を真実へと導く動物といわれてきました。勇気、強さ、力、権力、リーダーシップを表すモチーフです。熊の足跡も同じ意味を持ちます。
鷹(イーグル)
生き物の中で最も高くまで勇猛に飛ぶ鷲は、太陽の近くまで飛んでいける唯一の存在です。そこから、最も神様に近い存在とされてきました。名声やリーダーシップ、将来性の象徴です。
羽根(フェザー)
神様に最も近い存在である鷲は、神様に人間の思いを伝えてくれる生き物です。その羽根は、神様と交信するための重要なアイテムとして用いられました。お祓いにも使われました。
また、鷲が羽根を羽ばたかせて飛び立つことから、飛躍することや運気を上げることを象徴します。
さらに、歓迎と友情、平和も表しています。インディアンは友情を深めたしるしとして羽根をプレゼントする風習があり、このことから羽根のペンダントを身につけることによって真実の友情が得られるという意味が持たれます。
蛇(スネーク)
蛇は生まれ変わりや変化を象徴しています。また、挑戦して成し遂げることも表します。
亀(タートル)
亀が身を守るための堅い甲羅は、守ってくれる存在を意味します。また、ゆっくりと穏やかに歩く姿から、母なる大地を象徴し、女性の守り神とされています。祖先との絆を結び、また創造力、知識を高める能力、基礎能力を高める存在とされています。
蜘蛛(スパイダー)
ホピの伝説では、蜘蛛は赤土と自分の出す意図とを混ぜ合わせて人間を作った副創造主です。このことから、創造性、独創性を意味します。
また、毎日地道に巣を作っていく姿から、地道にコツコツと積み上げていき、成功していくという意味合いもあります。他に、戦いや反逆を意味する場合もあります。
蝶(バタフライ)
力強く羽ばたく姿から、生命力やエネルギーを象徴します。また、幼虫からさなぎの姿を経て羽化する様子から、変化や喜び、色を表します。
サンダーバード
サンダーバードは、インディアンの神話に登場する伝説上の巨大な鳥です。嵐を呼び、雷を招き、その目からは稲妻が走ると伝えられています。火を象徴し、無限の幸せを運んでくるといわれています。リーダーシップを象徴します。
トカゲ(リザード)
知性を象徴し、地上のすべてを知り尽くす存在と言われています。このことから地上の守り神とされています。
ハチドリ(ハミングバード)
ハチドリ科に属する鳥の総称です。鳥類の中で最も体が小さく、蜂のようにブンブンと羽音を立てながら飛ぶことからハチドリと名付けられました。インディアンの間では、この可愛らしい鳥は幸せを運んでくると言われています。
コヨーテ
オオカミに似た動物です。知性を象徴し、霊的な世界へ行くことができる聖なる動物です。部族によっては、戦いの神、反逆者という意味も持たれます。
サンダーバードトラック
サンダーバードトラックは、サンダーバードの足跡です。幸せで明るい未来への期待を表します。
かぼちゃの花(スカッシュ・ブロッサム)
豊作や子孫繁栄を象徴する花です。
とうもろこし(コーン)
ホピをはじめとする多くのインディアンの主食となってきた最も重要な作物です。母なる大地からの贈り物を意味します。
5.神聖な意味を持つ代表的なデザイン|その他編
矢(アロー)
自分自身を守る存在です。
交差する矢(クロスト・アロー)
クロスした矢は、友情の証を表します。
折れた矢(ブロークン・アロー)
矢が折れた様子は、平和を表します。
迷路(メイズ)
迷路は母なる大地、また人生が表現されたものです。生命のサイクルや永遠の流れを象徴します。また人は常に選択や困難に直面しますが、最後には必ずそういった苦難から抜け出すことができるという意味を持ちます。
十字(メディスンホイール)
輪と十字で描かれた図形です。
始まりも終わりもない「輪」という世界観を表し、また東西南北の方向や色、人種、季節などをはじめとする様々な意味が4つの要素に分かれ、調和などを表します。また、十字はインディアンにとって神聖な数字である「4」を表し、輪は全てのものと自分はつながっていることを意味します。
6.まとめ
インディアンジュエリーは、単なるファッションアイテムではなく、人の心の在り方を教えてくれる神聖なものです。
インディアンジュエリーに描かれた模様には、こんなに壮大な世界観が描かれていたのですね。そこには、自然界にあるものをはじめ、身の回りのもの全てから気づきや学びを得て感謝するという、人間の本来あるべき姿が示されています。
ちょっと画面から目を離し、窓があれば外を見てみましょう。できれば窓を開けてみましょう。窓がなければ、自分の手を見てみましょう。そして深呼吸しましょう。今、あなたは大自然の一部として生まれ、生きているのです。他の人も、動物も、植物もそうです。あなたは宇宙を構成する大切な要素なのです。大地に、宇宙に思いを馳せ、今日も生きていることの大きさを感じてみてください。それこそが、人間の原点なのです。