陰陽師・安倍晴明をご存知でしょうか。
陰陽師・安倍晴明は何度もドラマや映画などに登場してきましたが、作品を見る限り、何やら超常的な術を使って異形のものを派手に退治するオカルトなイメージがあります。
まるで超能力やマジックかの様に派手に描かれているため、陰陽師という存在自体が空想の産物にように思えてしまいがちです。
安倍晴明は平安時代の日本に実在した陰陽師。現在も陰陽師は存在しますが、実際に彼らはどんな役割を担い、何を行っているのでしょうか。
今回は、陰陽師について簡単にわかりやすくまとめてみました。
1.陰陽師の「陰陽」って何?
陰陽師の「陰陽」は、飛鳥時代から日本に浸透した「陰陽道」に由来します。
陰陽道とは、日本独自で発達した天文道・暦道を用いた呪術や占術の技術体系のこと。その起源は「陰陽思想」「陰陽五行論」という2つの中国思想です。
- 陰陽思想…森羅万象、宇宙の万物には「陰」と「陽」の対極する2つの性質があるという思想。
- 陰陽五行論…万物は木・火・土・金・水の5種類の元素から成り立っているという五行説が陰陽思想に加わったもの。
2.陰陽師が行った5つの業務
陰陽師は昔から陰陽道に基づいた呪術や占術を行ってきました。現在、日本に存在する陰陽師の主な仕事内容を見ていきましょう。
①鑑定・占術
相談者の悩みを聞き、陰陽道の「先読みの術」を用いて現状や将来を鑑定します。
②吉方・吉日読み
相談者にとって移転や移動の吉方や、物事を行うべき吉日を読み伝えます。
③家相・地相読み
家屋や土地の相だけでなく、実際に足を運んでその地域の状態を踏まえた吉凶を読みます。
④オーラ読み
相談者の心身の状態や、特定の部位の不調などを気の流れから読みます。
⑤鑑定結果に応じて術をかける
鑑定が凶と出た場合、結界、式神、除霊などの術を用いて災いを退けます。陰陽師によって個人差はあるかもしれませんが、人によっては1000を超える術をもっているそうです。
3.陰陽師が使用していた商売道具
一般的に知られている陰陽師の役割は、この陰陽道によって国の祭祀を執り行う他、未来を占ったり、願望成就や厄災祓いを行ったりするもの。その際に用いられる陰陽師の必須アイテムを見ていきましょう。
九字印
出典:Wikipedia
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前(りんびょうとうしゃかいじんれつざいぜん)」指で空間を切ったり、手で印を結びながら唱えるのが九字印。あらゆる厄災から身を守る最強の印です。
急急如律令(キュウキュウニョリツリョウ)
「急いで法律のごとく行え」という意味があり、悪霊に対して「早々に退散せよ」」という呪文として使われます。
式盤
陰陽師にとって、最も欠かせない必須アイテムは中央に北斗七星が描かれた式盤。十干、十二支や四方門などの記号が記載されており、出目の計算によって占断します。
呪符、霊符
陰陽師は呪文や文様を示した呪符や霊符を適宜使い分け、災いを祓うなどします。安倍晴明のトレードマークである五芒星が書かれた護符は、誰もが目にしたことがあるかもしれませんね。
人形(ひとがた)
出典:鎌倉散歩生活
形代(かたしろ)ともいい、紙や藁などで人の形に作られた人形を身代わりとして使うものです。身体の不調部位に擦りつける、お守りにするなどして役目を果たした後は、燃やしたり、川に流したりするのが一般的です。
式神
「式」は用いるという意味で、「式神」は神を用いるということ。陰陽師の召喚に応じて神が無生物のものに宿り、指示に従うとされています。
4.陰陽師が使用した式神の真実
陰陽師のイメージとして最も強いインパクトがあるのが、この式神という術。そして、最も人々が陰陽師をオカルト視するゆえんですよね。
ドラマや映画、漫画などでは式神が宿った紙切れが生き物の姿になって活躍する様が見られますが、果たしてどこまで本当なのでしょうか。式神として十二神将を操ったとされる安倍晴明については、この様な伝聞があります。
- 家の中で式神を使徒して門扉を開閉させたり、お茶を運ばせたりしていた。
- 式神によってミカン16個をネズミ16匹に変えてしまった。
- 式神によって、たった1枚の木の葉でカエルを潰してしまった。
- 花山天皇の頭痛の原因を式神によって解明し、本当に治してしまった。
現在活躍中の陰陽師・安倍成道は、かの安倍晴明の血脈を受け継ぐ人物だそうですが、彼は式神の術を実際に行っていると言います。
ただし、紙が生き物の姿に…というのはいささか誇張交じりかもしれませんし、安倍晴明のカリスマ性に尾ひれがついて都市伝説化していたとも考えられます。当時の安倍晴明の人気をスター性を物語る寓話と言ってもいいのかもしれません。
では実際の式神の術は、一体どういったものなのでしょうか。
陰陽師・安倍成道によると、現在は式神によって木や紙などに神を宿らせ、相談者に合わせて護符を作成するのが主流になっているそうです。
霊を憑依させるイタコや人形(ひとがた)などの身代わり術の類いと考えると、それほど不思議な話ではない気がしますよね。
5.5分でわかる陰陽師の歴史
陰陽師の誕生から今日まで
飛鳥時代になると中国から伝来した「陰陽五行思想」が国の進むべき道を占う風水として政治的役割を持ち始め、朝廷内に国家機密機関「陰陽寮(朝廷内の陰陽師が所属する機関)」が設立されました。
その頃、一般庶民は陰陽道を学ぶことは禁じられていたのです。
平安時代になると陰陽道に精霊信仰が加わり、陰陽師は悪霊祓いの役割を強めていきます。陰陽師が最も活躍したのも安倍清明が登場したのも、この時代です。
戦国時代には陰陽師嫌いの豊臣秀吉によって朝廷の陰陽寮は廃止されましたが、江戸時代には政治的役割を失いながらも民間での占いや地相見として定着していきました。
明治時代から近代にかけては科学技術の発達はめざましく、信仰心自体が次第に薄れつつあります。かつては学問として国の政治的役割を担っていた陰陽道も、宗教信仰としてマイノリティ扱いになってしまっているのが現状です。
陰陽道に精霊信仰が加わった理由
もうお分かりでしょうが、陰陽師とはもともと朝廷機関に所属する官人。陰陽道に基づき、六壬式盤(りくじんちょくばん)を用いる占い師で、特別な能力を有した者というわけではありませんでした。
しかし、平安時代以降の陰陽師は悪霊退散などもやってのけています。これは先に説明したように陰陽道に精霊信仰加わったため。
つまり、それまで占いによって判断されていた吉凶には、見えないものの干渉があると考えられる様になったからでしょう。
目に見えないものを言い出すとうさん臭さを覚える人もいるかもしれませんが、目に見えないものにこそ真理あり。長い歴史を見てみると、これは大きな進歩だったのかもしれませんね。
6.まとめ
近年、多くの作品でとりあげられている陰陽師。すっかり空想の産物の様に描かれていますが、国が学問として重んじてきた陰陽道に基づく占術・呪術師として実在してきたことがわかりました。実際に陰陽師の術を受けることがあるかどうかはわかりませんが、気になる方はまず、京都にある晴明神社を訪れてみてはいかがでしょうか。