深層心理学の祖といってもいい人物スイスの精神科医ユングは、『無意識』の概念を世に広めた人物です。精神医学の巨人とも呼ばれるユングが説いたユング心理学を簡単に紐解いていきます。
ユング氏は、人が『外向けの顔』と『内向けの顔』を自然にもち合わせる事や、人格の影の部分をコンプレックスであると定説しました。そんな心理学入門のユング心理学について重要な部分だけを分かりやすく紹介していきます。
1.精神医学の巨人ユングが創始した深層心理学理論とは?
出典:the-liberty
1875に生まれたスイスの精神科医・心理学者のカール・グスタフ・ユングが提唱した深層心理学理論の事を『ユング心理学』と呼ばれ、現代の分析心理学にも影響が少なくありません。
ユング心理学で語られるのは、人間の心は、意識としてコントロール出来る領域だけではなく、意識することのない無意識の領域の影響を大きく受けているという考えに基づいた心理学です。
この心理学は世界中に大きな影響を与え、現在の心理療法に生かされています。
2.ユング心理学①心が意識と無意識に分けられる理由
言葉通り意識していない状態、意識することのない心の領域のことを無意識と言います。
ユングは心について意識と無意識に分け、さらに無意識を個人的無意識と集合的無意識の2つに分けて考えました。
意識とは
意識とは自分主体の意識の総体であり、普段自分自身で物事を考えたり、判断したり、感じたり、五感によって導かれているものになります。今こうして文字を読んでいることも意識により行っていることです。
個人的無意識とは
意識の次の層にあるとされる個人的無意識。
自分自身によって意識から不快な記憶や外傷体験など心に悪影響を及ぼすもの、強い感情やこだわりを忘却、抑圧させたものを個人的無意識と言います。その言葉の通り、個人の体験や考え方に基づいた無意識となります。これがコンプレックスへと繋がるのです。
集合的無意識とは
個人的無意識の次の深い層にあるとされる集合的無意識、普遍的無意識とも呼ばれます。
意識、個人的無意識とは違い、個人の経験を越えた、人類が長く生きてきた中で蓄積されたものが遺伝的に継承された領域で、民族が違っても人類に共通する先天的な意識を集合的無意識と言います。
3.ユング心理学②元型(げんけい)無意識人格の種類
人類に共通した型、自律して本能的に働く力のことを元型と言います。この元型は集合的無意識の中にあるとされています。民族・人類の神話に共通して現れることをユングは見出しました。
そして人類が今まで生きてきた中で培われてきた元型を、今現在生きている私達が意識することは出来ません。
元型(げんけい)の考え方はさらに影、アニマとアニムス・グレートマザー・トリックスター・老賢者・仮面・神秘な子供などに分けられ、それぞれの特性が心に影響を与えています。
今回は影について詳しく説明します。
アニマとアニムス
女性的な要素の元型をアニマといい、男性の集合的無意識の中にあります。男性的な要素の元型をアニムスといい、女性の集合的無意識の中にあります。
グレートマザー
母の元型です。地母神とも呼びます。
トリックスター
いたずら者や詐欺師の元型です。ヒーローとして民話や神話に登場しています。
老賢者
父の元型です。グレートファザー、マナ人格とも呼ばれます。
仮面
ペルソナともいいます。ユング心理学においての仮面とは、本来の自分の姿ではないけれど、周りと関わっていくために表現している自分です。
神秘な子供
幼児の元型です。純粋で傷付きやすくて汚れを知らない力を持っています。
4.ユング心理学③コンプレックスとは人格の影である理由
元型のことについて知らなくても、日常生活の中で影やコンプレックスという言葉を使用することがあると思います。
自分がなりたくないもの、苦手なもの、抑圧しているもの、未発達なものなどが自我から無意識へと排除されたものが影またはコンプレックスとなります。
そんな影が活動しているときとはどんな時でしょうか。
別人のように人が変わるとき、自分を制御できなくなるときなどは影の部分が心の奥底で活動しているのかもしれません。
影が活動しているときは、自分でも思ってもみない態度や行動を取ることがあります。ですが、その影と対決しなければならない時があります。対決することで、方向を修正したり、自分に足りない部分を補ったりすることが出来ます。ただこの対決するということがとても難しいものです。
自分の状況を考えると変わらなければならないのに、心では変わることを拒否してしまう。この葛藤に苦しみ、不安を生み出すことになってしまいます。
2.コンプレックスと対話する方法
自分自身を制御できない状況を作り出してしまうことは、他人にとっても悪影響となってしまいますので、すこしでも改善させる必要があると思います。かといって無意識の中にある影に対してどのような対策を取り、克服させればよいのでしょうか。
影の中には悪影響な部分だけではないので全否定してしまうのはよくありません。悪影響の部分だけ対策を取っていく必要があります。
ユング心理学の基本に対話があります。
自分と他人との対話はもちろんのこと、自分自身と対話することも必要です。特に影を克服するためには対話は大切なものになってきます。どんな時に影が活動しているのか、どの部分にコンプレックスを感じているのか、無意識の中に隠れている真の影を見極めなければなりません。
例えば、この人と話していると必ずイライラしてしまうというときは、話している相手にイライラしているのではなく、その発言内容や態度など、自分にとってコンプレックスに感じている部分が隠れているはずです。
それを見極めることで、人そのものにイライラすることはなくなり、周りへの悪影響も減ってくると思います。
そして影が活動しているときがいつになるのか、自分自身と対話をして、目を背けずにしっかりと向き合うことで克服へと歩いていけると思います。
6.コンプレックスを克服して本当の自分を知る方法
コンプレックスを克服させるには、その核となる部分を無意識から、表現等により外に出す必要があります。そして外に出すためには無意識の中にある本当の自分を理解しないといけません。
今まで気付かないふりをしてきた感情、抑圧してきた感情としっかりと向き合い、過去に言えずに流してきてしまった言葉、表現出来なかった感情を見つけてあげましょう。
そして自分と対話するときに、あのとき言えなかった言葉、感情を表に出すことで、奥底に溜まっていた塊がゆっくりと流れ出ていくでしょう。
本当の自分を知り、向き合うことは簡単ではありませんし、自分の影の部分を見ることは、避けてきたことでしょうから上手く出来ないこともあるかもしれません。自分と向き合えるのは自分しかいません。
他人といるときに新たな自分に気付くこともありますが、影の部分には目を背けてしまうことが多いです。
その影と向き合うときには労力を使うと思いますが、少しずつ自分との対話で本当の自分を知り、克服するべきことを克服していければいいと思います。
影の中にも良い部分はありますので、自分を否定するばかりではなく、良い部分は素直に受け入れ前向きに考えていくと、良い方向へと変わっていけると思います。
7.まとめ
ユング心理学において、自分自身の影、コンプレックスの克服の仕方を少しでも理解していただけたでしょうか。ユング心理学において大事なことは、自分自身との対話により、自分と向き合っていくことです。
自分の無意識に存在している影の部分を理解していくことは困難なことですが、理解し対策を施し克服することで、今よりももっと前向きに生きていけることへと繋がっていきます。自分の事をしっかりと理解してあげましょう。