心理学を利用すれば、他人の心が分かったり、思った方向に誘導することはそれほど難しいことではありません。
こう言うと、とても邪悪で聞こえの悪い話の様ですが…実際に企業セールスやPRに、この心理学盛り込むこともありますよね。
悪徳商法でなければ理に適った、無駄のない方法であることは間違いないでしょう。
心理学を日常で試す方法を知っておくこと自体は悪いことではありません。
あなた自身が、自分の身を守ったり、どこかでアピールしたりするための有効な手段として心理学が大活躍する時がやってくるはずです。
今回は、実際に行われた5つの心理学実験と、あなたが日常でも試せる方法を紹介します。
1.日常でもできる5つの心理学実験
1|ハロー効果で第一印象を操る心理学
ある特定の対象を評価する時に、目立った1つの特徴に引きずられて、他の特徴についての評価をゆがめてしまうという心理法則。
つまり全ては第一印象で決まる、ということです。
実証実験
アッシュの「印象形成実験」を紹介しましょう。
被験者を半数ごとにグループA,Bに分け、それぞれにある人物の特性をリストした紙を見せました。
- A|知的な、腕が立つ、勤勉な、温かい、てきぱきしている、実際的な、注意深い
- B|知的な、腕が立つ、勤勉な、冷たい、てきぱきしている、実際的な、注意深い
- AとBのリストの違いは「温かい、冷たい」の違いのみですが、たったこれだけのために全体から受ける人物の印象はかなり違ってくるようです。
- A|知的な、勤勉な、強力な、非難的な、頑固な、嫉妬深い
- B|嫉妬深い、頑固な、非難的な、強力な、勤勉な、知的な
この場合、AとBのリストの違いは、提示順序のみです。
しかし、双方受け取ったイメージは異なり、A「欠点はあるが、能力のある人」B「欠点があるために能力があっても残念な人」という結果になりました。
日常事例
難関大学卒、スポーツ万能、字がうまいと人格的に優れていると思われることもあるようですね。
実が伴っていないと後々ボロが出かねませんが、好印象を持ってもらえると活動しやすいのは確かです。
笑顔、話し方、服装の第一印象には気を付けましょう。また、話に説得力を持たせるために、「○○大学の教授が言っていた」など権威ある人の名前を出すのも有効手段です。
2|カリギュラ効果で禁止行為をしたくなる
カリギュラ効果とは、禁止されるとかえってその行為をやってみたくなるという心理効果。テレビでの「モザイク」や「ピー音」はその心理を利用したものなのです。
そういえば「閲覧禁止」と書かれているページを開いてしまう…と思い当たる人は多いでしょう。
実証実験
アメリカのテレビ番組での実験です。
塀に穴をあけ、「覗くな」と書いた張り紙を貼って、通行人の行動を隠しカメラで撮影していたところ、ほぼ100%の通行人が穴を覗いて行ったという結果がでました。
日常事例
禁止されていると「未経験の刺激」に対する衝動が抑えきれなくなるようです。
露出度の高い女性に興味を抱かない男性がいるというのもこの心理が働いてのことでしょう。
見てほしいものほどコソコソ。
「いいこと」が書いてある日記帳をコソコソしたため、ちらりとのぞかせていると、それを目にした両親やパートナーがあなたへの信頼を固くする…という使い方もできそうですね。
ただし嘘や悪意はいけません。
3|希少性の法則で価値を上げる
希少性の法則とは、簡単にいつでもどこでも手に入るものは価値が低く、反対になかなか手に入らないものは価値が高いと考えてしまう心理法則です。
実証実験
被験者を同数グループA,Bに分け、
- A|クッキー20枚入りの瓶
- B|クッキー2枚入りの瓶
という条件で、それぞれに味の批評をさせた結果、グループAより、グループBの方が「クッキーの味がおいしい」という評価をした者が多かったようです。
日常事例
- 料理を小盛にすることで、美味しいを思わせる。
- 商品の人気を高めるためには「期間限定!残りわずか!希少!」という文言を利用するとよい。
4|ミラーリングで相手との距離を縮める
ミラーリングとは好感を寄せている相手のしぐさや動作を無意識に真似する、または自分と同様のしぐさや動作を行う相手に好感をもってしまうという心理法則です。
実証実験
ニューヨーク大学で行われた、会話のペアになった相手との好感度を測る実験を紹介します。
15分間の実験で、Aには相手のしぐさを真似するように指示し、Bには何も指示しませんでした。
すると、AがBに持った好感度は60%程度でしたが、BはAに73%の好感度を持っという結果がでました。
日常事例
相手と言動を似通わせることで「類は友を呼ぶ」という共感の現象が起きます。
しかし、あまりあからさまにすると単なる気持ち悪い人なので、あくまでさりげなく。
- 相手が食べ始めると同時に、自分も同じものを食べ始める。
- 相手が見つめてきたら自分も見つめる。
- 相手が笑ったら自分も笑う。
- 相手がもたれたら自分も背もたれにもたれる(上司の前ではやめてください)。
- メールのテンションや絵文字使いを合わせる。
友達になりたい人、意中の相手にやってみるのもいいですし、人間関係を円滑にするツールにもなりそうですよね。
5|バーナム効果で相手にそう思い込ませる
バーナム効果とは、実際には誰にでも当てはまるようなことなのに、自分だけに適用される極めて正確な内容だと思い込んでしまう心理効果です。
占い師、詐欺師の常套手段として有名なテクニックですよね。
実証実験
心理学者バートラム・フォアは「フォアの実験」を紹介しましょう。
彼は人の性格にいて心理検査を実施し、その結果に基づく分析結果を次のように箇条書きにしました。
- 他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っているが自己批判をする傾向がある。
- 弱みをもっていても、それを普段は克服することができる。
- 雇われることで生かし切れていない才能を多くもっている。
- 外見的には規律正しく自制的だが、内面ではくよくよしたり不安になることがある。
- 正しい判断や正しい行動をしたのかどうか、真剣に疑問に感じることがある。
- ある程度の変化や多様性を好み、制約や限界に直面したときには不満を抱く。
- 独自の考えをもっていることを誇りに思い、根拠もない他人の意見を聞き入れない。
- 外交的・社交的で愛想の良いときもあるが、一方で内向的で用心深い。
- 願望にはやや非現実的な傾向のものがある。
実はこの文章、フォアが星座占いの文章を組み合わせて作文しただけのものなのですが、被験者の多くが「この分析は当たっている!」と回答したそうです。
日常事例
マイナスイメージでなければ人は信じやすい、有名な偉人の言葉は信じやすい…など、さまざまなポインとを抑えつつ、誰にでも当てはまるような意見を数打ってみましょう。
A型だから几帳面なのかな?(几帳面なO型もいる)
最近何か悩み事があるよね?(ない人の方が珍しい)
など、10回中3回ピタリと的中させることができたら、周囲のあなたへの評価は「洞察力が優れた人」になるに違いありません。
2.心理実験の父と呼ばれたヴィルヘルム・ヴントの生涯
出典:britannica
ヴィルヘルム・ヴント(Wilhelm Max Wundt, 1832年8月16日 – 1920年8月31日)は、ドイツの生理学者・哲学者・心理学者で 実験心理学の父とされています。その息子は哲学者のマックス・ヴントです。
心理学は直接経験の学であると論じた人物です。
1832年に牧師の子として生まれ、12歳の時にテュービンゲン大学に入学しました。しかし高校時代に落第して転校したくらい高校時代まで学校嫌い・勉強が嫌いであったが、ハイデルベルク大学医学部に入学してからは猛勉強をするようになり一時は教師を務めます。
1862年から私講師として「自然科学から見た心理学」「生理学的心理学」といったタイトルの講義を担当しました。
1873年『生理学的心理学綱要』の前半を出版し学者の道が開けていきます。
1879年には、世界でももっとも初期の実験心理学の研究室を運用したと言われており、心理学史の多くではこの時をもって、” 新しい学問分野として心理学が成立 ” させました。
ヴントの心理学研究室での成果を中心とした諸論文を掲載し、心理学の発展に寄与をしつづけ大きな発展に加速をかけました。
ヴントの残した足跡からの実験的方法は今日まで発展を続けているが、後の学派、ゲシュタルト心理学や行動主義心理学から反発を受けています。ヴントはメトロノームを使った実験をおこない、感情の三次元説を展開した。意識的感情は快と不快、弛緩と緊張、鎮静と興奮に沿って変化すると結論づけをしています。
ちなみに、本人は自身が心理学者であると思って仕事をしていた訳ではなかったともあります。
3.まとめ
5つの心理学実験のうち、あなたが使ってみたいものはありましたか?
もしかすると、無意識のうちに使っていた…というものも、中にはあったかもしれませんね。
知識を手に入れ、良い間合いでそれを繰り出す効果的な使い方に慣れていくというのも、一つの成功の秘訣でしょう。ぜひこの記事をきっかけに、あなたも心理学に詳しくなってみてくださいね。