白人が恐れたネイティブアメリカンの儀式ゴーストダンスの精神

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アメリカ大陸をインドだと勘違いしたコロンブスからはじまり白人たちによって不当な迫害を受け続けてきた先住民ネイティブアメリカン。

その差別と迫害の傷跡は現代も深く残り、深刻な問題でもある。

ネイティブアメリカン達を支配しようとした当時の白人は、大自然とともに生きる彼らの優れた能力に危険・恐れを感じ、無差別的な虐殺の悲劇を引き起こしました。その虐殺のきっかけの一つとなった「ゴーストダンス」について今回は解説していきます。

教科書には取り上げられないアメリカの歴史を知ることは日本にも無関係ではありません。

1.ゴーストダンスとは

ゴーストダンス(幽霊踊り)は、虐げられてきたネイティブアメリカンの間で19世紀後半に起こった宗教運動で、1870年にパイユート族の預言者ウォヴォカが啓示を受けたことによってはじめられました。

当時のネイティブアメリカンは、外側から来た白人によって仕事・家族・財産にいたるまですべてを奪われて困窮します。また先祖から受け継がれてきた伝統や継承も取り締まられ、心理的にも抑圧され住み慣れた土地を追われました。

そんな中、このゴーストダンスを踊ることで白人によって殺された者の霊がよみがえり、バッファローの大群が再びやってきて、平和な楽園がやってくるというこの信仰が、多くのネイティブアメリカン達に勇気と希望を与える象徴となっていき流行したのです。

ゴーストダンスが流行った意味

  • 白人によって亡くなった仲間が死の国から蘇る
  • バッファローの大群が白人をたおす
  • 勇気と希望の象徴

当初このゴーストダンスは、「白人とも仲良くしよう、暴力のない平和な世界をつくろう」というものでしたが、次第にそこに「大地から白人がいなくなる」という思想に変わっていきました。このことにより、白人たちはゴーストダンスを恐れるようになったのです。

2.ネイティブアメリカンが継承したゴーストダンスの精神

非暴力による救いの教え

ウォヴォカが説いたゴーストダンスの教えは、次のようなものでした。

良いことだけをしなさい。
互いに愛し合い、争い事はしないようにしなさい。
白人とも平和に暮らしなさい。
嘘をついたり、盗みを働いたりしてはならない。
戦いを好んだ古い習慣をすべて捨て去り、私の教えに従いなさい。
そうすればやがて、この彼岸において、友人たちと再会できるだろう。
そこにはもはや死もなければ、病もなく、老いもないだろう。

このように、優しい心をもって新しい世界のために祈り踊り続けることが説かれました。この教えは、厳しい生活を強いられていたネイティブアメリカン達に生きる希望を与えました。

しかし、ネイティブアメリカンを根絶やしにしたいとさえ思っていた白人たちは、ネイティブアメリカンを勇気づけるこの信仰を快く思いませんでした。

ゴーストシャツを切れば無傷でいられる

ゴーストダンスが広まっていく中で、スー族の呪術師マト・ワナタケ(キッキング・ベア)が、

呪術師マト・ワナタケ
「ゴーストダンスを信じる者に与えられる『ゴーストシャツ』を着れば、白人に撃たれても銃弾が通らずに、無傷でいられ、白人のいない新しい世界がやってくる」

という教えを加えました。この教えによって、白人たちはさらにネイティブアメリカンを危険因子として警戒するようになりました。

3.白人が誤解していた部分

「愛の宗教」のゴーストダンスですが、輪になって踊り続けるネイティブアメリカンの姿と団結力、そして理想郷を求め続ける熱心さに恐れをなした白人たちの目には、その様子はネイティブアメリカンの一斉蜂起の予兆のように映りました。

略奪行為を続けた後ろめたさがあったのか、白人たちはネイティブアメリカンが反乱を起こす時が必ずやってくると信じており、その時を恐れていました。

そして政府は、この宗教を破壊するように軍隊を動かし、大量虐殺に至ったのです。

4.白人から見たネイティブアメリカン像

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アメリカ大陸に乗り込んできた白人たちの多くはキリスト教徒でした。キリスト教では、魔術や呪術は禁じられています。

ゴーストダンスはもちろん、スウェットロッジやユウィピ、体の一部を取って神に捧げるサンダンスやフレッシュオファリングなどといったネイティブアメリカンの儀式や風習は、一部の白人たちの目には魔術的、悪魔的、異教的に映りました。

それを口実に白人たちは、ネイティブアメリカンをキリスト教的に生まれ変わらせるための「更生」「取り締まり」と称して、弾圧や虐待を推し進めていったのです。

5.ゴーストダンスとキリスト教の共通点

ゴーストダンスが元々持っていた考え方は、実はキリスト教の思想によく似ているところがあるのです。

ゴーストダンスの創始者であるウォヴォカは、ネイティブアメリカンの間で「救世主」とされましたが、ネイティブアメリカンがキリスト教の影響を受ける以前から、神話の中で救世主が信じられてきました。

そしてウォヴォカの説いた教えは、無抵抗、兄弟愛といった人類愛ですが、これはキリストの教えと酷似しているのです。

キリスト教の聖書では、弱いものを助け隣人を愛すること、また救世主キリスト自身が人間の罪のためにまったく抵抗せずに十字架で処刑され、やがてそのキリストが再び現れて、死者をよみがえらせ、罪赦された人間を新しい世界に連れて行ってくれることが書かれています。

ゴーストダンスも、人々がよみがえった死者とともに美しい世界で平和に暮らすことを目指しています。聖書の教えを実践できなかった白人たちは、同じような思想をもつネイティブアメリカンに憎悪の念を抱いたのかもしれません。

6.まとめ

ネイティブアメリカンは19世紀から今に至るまで、毎日テロの恐怖の中で過ごしてきた事実を思うと、本当に胸が痛みます。そんな中で生きる希望を持ち続けることは、私達を含むすべての人が心穏やかに過ごせる平和な世界が訪れることを祈っていきましょう。

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